株式会社と合同会社、設立するならどちら?
※この記事は2026年10月14日現在の税法などの情報にもとづいています。
株式会社と合同会社のどちらがよいかは、会社の名前を表に出して商売をするかどうかで変わります。
会社の名前で取引先とやりとりする商売なら、当事務所では株式会社をお勧めすることが多いです。設立のときの費用は合同会社より10万円以上高くなりますが、取引先からの見え方が違うからです。
お店の名前やサービスの名前で商売をしていて、会社の名前をあまり出さないなら、合同会社で十分なことが多いです。設立の費用をおさえられるので、最近はこうした商売を合同会社で始める方が増えています。
なお、株式会社と合同会社は、法律の上では細かい違いがたくさんあります。それでも、どちらも同じ「会社」で、会社の名前で契約をしたり、税金を納めたりする点は変わりません。社長ひとりや数人で運営する小さな会社なら、ふだんの仕事で違いを感じる場面はあまりありません。この記事では、会社を設立する前に知っておきたい違いにしぼって説明します。
そもそも会社にするかどうか迷っている方は、「法人化の目安は利益いくらから?」をご覧ください。
税金と社会保険は、どちらでも同じです
株式会社でも合同会社でも、会社のもうけにかかる税金(法人税)のしくみは同じです。税率も変わりません。赤字の年でもかかる住民税(均等割)も、会社の種類ではなく、資本金や従業員の数で決まります。
社長の給料(役員報酬)のルールも同じです。合同会社では社長の肩書きが「代表社員」になりますが、税金の上では株式会社の社長と同じに扱われます。毎月同じ額を払うという決まりも同じです。役員報酬の決め方は、当事務所のコラム「役員報酬はどう決める?」で説明しています。
健康保険と厚生年金も同じです。社長が役員報酬を受け取っていれば、社長ひとりの会社でも加入が必要です。株式会社か合同会社かは関係ありません。
設立のときの費用は、合同会社のほうが10万円以上安くなります
会社を設立するときには、国などに払うお金があります。2026年10月時点では、次のとおりです。
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| 登記のときに国に納める税金(登録免許税) | 15万円から | 6万円から |
| 会社の基本ルール(定款)を証明してもらう手数料 | 1万5,000円から5万円 | かかりません |
| 定款を紙で作成する場合の印紙代 | 4万円(電子定款なら不要) | 株式会社と同じ |
登録免許税は、資本金が数百万円の会社なら、株式会社は15万円、合同会社は6万円です(出典:国税庁「登録免許税の税額表」)。
定款は、会社の名前や目的などを書いた、会社の基本ルールです。株式会社は、この定款を公証役場(書類を正式に証明してくれる役所)で証明してもらう必要があり、手数料がかかります。合同会社は、これがいりません。
株式会社の手数料は、資本金の額などで変わります。資本金100万円未満で条件を満たせば1万5,000円、資本金300万円以上なら5万円です。この金額は2024年12月に見直されたので、3万円と書いてある情報は古い金額のことがあります(出典:公証人手数料令)。
まとめると、資本金が数百万円の小さな会社なら、合同会社のほうが10万円から14万円ほど安くなります。
手続きを司法書士(登記の専門家)に頼む場合は、これとは別に報酬がかかります。当事務所がご紹介している司法書士では、9万円から12万円ほどが目安です。
会社の名前で商売をするなら、株式会社をお勧めしています
合同会社は、2006年にできた新しい会社の形です。少しずつ知られてきましたが、まだ株式会社ほどなじみはありません。
当事務所のお客様にも、取引先から「合同会社って、どういう会社ですか?」と聞かれた方がいました。その方は、社長個人として取引先から信頼されていたので、合同会社だからといって困ることはありませんでした。
逆にいうと、社長のことをまだ知らない相手は、会社の名前や形を見て判断することがあります。会社の名前を出して新しい取引先を増やしていく商売なら、こうした説明が必要になる場面が出てきます。
肩書きも違います。株式会社の社長は「代表取締役」、合同会社の社長は「代表社員」です。合同会社の「社員」は、会社にお金を出した持ち主のことで、従業員という意味ではありません。でも、初めて見た人にはそれが伝わらないこともあります。
合同会社でも、契約や商売は株式会社と同じようにできます。法律の上で劣っているわけではありません。それでも、会社の名前を前に出して商売をするなら、設立のときに10万円あまり多く払ってでも株式会社にしておくほうが、あとで説明する手間が少ないと考えています。
合同会社で十分なのは、会社の名前を出さない商売です
当事務所のお客様は、7〜8割が株式会社です。全国でも、2025年に設立された会社は、株式会社が約10万社、合同会社が約4万5,000社で、だいたい7対3です(出典:法務省「登記統計」)。10年前は合同会社は2割ほどだったので、合同会社を選ぶ人は増えています。当事務所でも、最近は合同会社で設立する方が増えてきた印象です。
最近、合同会社を選んだのは、会社の名前をあまり表に出さない商売の方です。
ひとつは、福祉関連の事業です。就労継続支援事業所や生活介護事業所では、利用する方やご家族が目にするのは事業所の名前です。運営している会社の名前を気にする場面は、あまりありません。
もうひとつは、店舗ビジネスです。サロンや美容室に来る人が覚えているのは、お店の名前です。
社長の資産管理会社(不動産や株などを持つための会社)も、合同会社が多い例です。取引先がほとんどなく、会社の名前を見せる相手がいないからです。
迷ったら、「お金を払ってくれる相手が見るのは、会社の名前か、お店やサービスの名前か」で考えてみてください。会社の名前を見る人が多いなら株式会社、少ないなら合同会社で費用をおさえる、という考え方です。
設立したあとの手続きにも、違いがあります
株式会社と合同会社には、ほかにも違いがあります。ここでは、設立したあとで気をつけたいものを取り上げます。
まず、役員の任期です。株式会社の取締役には任期があります。株を自由に売り買いできないようにしている会社なら、定款で最長10年まで延ばせます。小さな会社のほとんどは、これにあたります。任期が終わったら、同じ人が続ける場合でも、登記をし直す必要があります(重任登記)。このとき、登記の税金が1万円かかります(資本金1億円以下の会社の場合)。うっかり忘れると、過料(ペナルティとして払うお金)を求められることがあります。任期を10年にすると手間は減りますが、そのぶん次の登記の時期を忘れやすくなります。合同会社には役員の任期の決まりがないので、この手続きはいりません。
次に、決算の公開です。株式会社には、毎年の決算の内容(貸借対照表)を公開する決まりがあります。官報(国が発行する新聞のようなもの)にのせる方法のほか、会社のホームページで公開する方法もあります。合同会社には、この決まりはありません。
もうひとつは、社長の住所です。会社の登記簿には社長の住所がのり、だれでも見ることができます。株式会社なら、2024年10月から、設立の登記などと一緒に、決められた書類をそろえて申し出れば、番地などを隠して市区町村までの表示にできるようになりました。2026年10月時点では、この仕組みは株式会社だけが使え、合同会社は使えません。ただ、法務省は合同会社などにも広げる方向で見直しを進めているので、今後変わる可能性があります(出典:法務省「代表取締役等住所非表示措置について」)。
合同会社で設立して、あとから株式会社に変えられますか?
変えられます。合同会社から株式会社に変えることを「組織変更」といいます。
ただ、手続きには1か月半以上かかります。会社にお金を請求できる人(債権者)に知らせるため、官報にのせて一定の期間待つ必要があるからです。費用も、登記の税金が合わせて6万円(資本金2,000万円以下の場合)かかり、ほかに官報の掲載料や司法書士の報酬もかかります。
将来、会社の名前を前に出して取引先を広げる予定があるなら、最初から株式会社で設立しておくほうが、あとで手間がかかりません。
設立の手続きは、だれに頼めばいいですか?
会社の設立の登記を代わりに行えるのは、司法書士です。税理士は、登記の代わりはできません。
設立したあとは、税務署や県・市に出す書類があります。たとえば、法人設立届出書は設立から2か月以内に出します。青色申告の承認申請書は、原則として設立から3か月以内(最初の決算日のほうが早ければ、その前日まで)に出します。青色申告にしておくと、赤字を次の年以降に繰り越せるなどの特典があります。健康保険と厚生年金の手続きも、設立から5日以内に年金事務所へ届け出る必要があります。
また、会社の種類と一緒に、資本金の額や決算の月も、設立の前に決めておく必要があります。どちらも、消費税がかかり始める時期や、最初の決算までの長さに関わります。設立の前に税理士に相談しておくと安心です。
当事務所では、登記はご紹介している司法書士にお願いしています。その打ち合わせには、当事務所も同席することがあります。設立したあとの税務署などへの届け出は、当事務所でお手伝いしています。
参考にした資料
- 会社法 3条、332条(取締役の任期)、440条(決算公告)、743条以下(組織変更)、976条(過料)
- 法人税法 4条1項
- 健康保険法 3条3項、厚生年金保険法 6条1項
- 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 法人設立届出・青色申告の承認申請の手続案内
- 公証人手数料令 35条
- 法務省「登記統計」商業・法人(2025年)
- 法務省「代表取締役等住所非表示措置について」