2026.07.22

法人化の目安は利益いくらから?

※この記事は2026年7月22日現在の税法などの情報にもとづいています。

「売上がいくらになったら、法人にすると得ですか」。法人化のご相談で、いちばん多い聞かれ方です。最初にひとつだけ訂正させてください。判断に使うのは売上ではなく利益(売上から経費を引いた儲け)です。同じ売上1,000万円でも、利益100万円の事業と700万円の事業では結論がまるで違います。そしてもうひとつ、金額だけでは決まらないという話を今日はします。

目安の利益800万円は判断材料の半分

検討を始めるラインは年間利益でおよそ700万〜1,000万円、中心は800万円前後です。

根拠は税率の構造にあります。個人の所得税は利益が増えるほど税率が上がる累進課税です。一方、法人税は資本金1億円以下の中小法人なら、所得800万円以下の部分に15%、超える部分に23.2%(2026年時点・国税庁)とほぼ一定なので、利益が大きいほど法人が有利になる仕組みです。

ただし、これは「800万円を超えたら法人化すべき」という基準ではありません。税金だけを比べたときの相場観にすぎません。実際のご相談では「法人でないと契約できない取引先を開拓したい」という理由で、利益が目安に届かないうちに設立する方もいます。逆に800万円を超えていても、急がない選択があります。

税金の外側にある社会保険料と維持費

世の中の「利益800万円」の解説には、抜けているものがあります。社会保険料です。

法人になると、社長ひとりの会社でも役員報酬を受け取る場合は健康保険・厚生年金への加入が原則必須になります。そして保険料は会社と本人で分担します。ご相談の場面で、この会社負担分の存在をご存じない方は少なくありません

実額で見てみます。当事務所のある西宮市で役員報酬を月30万円とした場合(40歳未満・協会けんぽ・2026年度の兵庫県料率)、会社負担はおよそ月4万4,000円、年間で約53万円になります。本人負担は別にあります。

さらに、利益が出ていなくても毎年かかる住民税の均等割があります。西宮市の会社(資本金1,000万円以下・従業者50人以下)なら市民税6万円と県民税2万2,000円で年8万2,000円です。設立時には登録免許税など20万円超がかかり、設立後は決算申告・給与計算・社会保険の手続きと、個人事業のときには無かった管理コストが確実に増えます。

だから損得は「税金がいくら下がるか」ではなく、社会保険料と維持コストを引いてもなお意味があるかで見ます。

数字より大事な判断軸

ここまで計算した上で、私が最後に確認するのは数字ではありません。法人という形を、社長自身が事業の次の段階に必須だと考えているかです。

法人でなければ口座を開いてもらえない取引先がいる。採用に会社の看板が要る。対外的な見え方を変えたい。この先は人を増やして拡大していきたい。こうした必要性が明確なら、利益が目安の手前でも法人化には合理性があります。反対に、信用力も採用も今の事業に必要なく、規模を広げる予定もないなら、数字だけを理由に設立すると負担感が残りやすくなります。

利益の額は判断材料の半分です。残りの半分は、事業をこれからどうしたいかです。

よくある誤解と実際に止めたケース

誤解にも3つ、よく出会います。「法人化すると経費の範囲が広がる」という期待。実際は、事業に関係ない私的な支出が経費にならないのは個人も法人も同じです。「社会保険料は給与から引かれる分だけ」という思い込み。会社負担分を落とすと比較が甘くなります。「作るのにも維持にもお金がかかるとは思わなかった」という声。法人は作って終わりではありません。

実際に、当事務所が法人化を止めたこともあります。事業規模がまだ小さく、保険料と申告費用でコスト倒れになるケースがひとつ。もうひとつは、いわゆるマイクロ法人を作れば得になると考えていたものの、均等割や申告費用、登記・社会保険の手間まで含めると効果がほとんど残らなかったケースです。作ってから畳むのは、作るより大変です。

まとめ

利益800万円前後は、検討を始める目安です。判断は社会保険料と維持コストまで含めた総額で行い、最後は「法人という形が事業に必要か」で決めます。答えは会社ごとに変わります。当事務所の料金シミュレーターで法人化後の顧問料の目安もご確認いただけます。ご自身の数字での試算をおすすめします。

経理まわりのお悩みは、お気軽にご相談ください。

モノリス会計事務所は、小さな会社の経理をまるごとお引き受けする西宮の税理士事務所です。

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